マーケティングの“構造”を理解する:初心者が迷わないための設計図
導入:マーケティングは「地図」を持てば迷わない
マーケティングを勉強し始めると、STP・4P・ファネル・ジャーニー…と、知らない言葉が次々に出てきますよね。私も新人の頃は、まさに「マーケ用語カードゲーム」のような状態でした。単語だけは増えるのに、頭の中ではぜんぜんつながらない。
クライアントとの会議でも、上司から「3Cは?」「ファネルはどう見てる?」と聞かれて、心の中で(それぞれは知ってるけど、どうつなげればいいんだ…)と冷や汗をかいていました。
でも、あるタイミングで気づいたんです。
私が知らなかったのは「知識」ではなく、「地図」だったということに。
どんなにたくさんの駅名を覚えても、路線図がなければ目的地に着けないように、
マーケティングも「構造=路線図」が見えていないと迷い続けます。
この記事では、初心者でもパッと理解できるように、マーケティングの構造を「たった1枚の地図」として整理します。
まずはむずかしい言葉を横に置いて、人の行動と流れから一緒に見ていきましょう。
この記事でわかること
- マーケティングが「何をする仕事」なのか、やさしい言葉でつかめる
- 専門用語の前に理解しておくべき「4つの流れ」がわかる
- 3C・STP・4P・ファネルなどの位置づけ(どこで使うものか)が理解できる
- 明日からの仕事や副業で、迷わない考え方の軸が手に入る
マーケティングは何をする仕事?【まずはやさしい言葉で】
マーケティングとは、ひと言で言えば、
「お客様に見つけてもらい、選んでもらい、好きになってもらうための仕組みづくり」
です。
ここで大事なのは、“一回だけ売って終わり”ではないということ。
「見つけてもらう → 選んでもらう → 何度も来てもらう → できればファンになってもらう」
この流れ全体を設計するのがマーケティングです。
つまり、マーケティングは
- 派手な広告だけの世界でもなく
- データだけを眺める仕事でもなく
- オシャレなデザインだけを考える仕事でもありません。
本質はただひとつ、「人の気持ちと行動を理解し、それに合わせて仕組みをつくること」です。
だからこそ、特別な才能よりも構造を理解する力が効いてきます。
マーケティングの“構造”は1本の流れで理解できる
「構造」と聞くと難しそうですが、やること自体はとてもシンプルです。
マーケティングの仕事は、たったこの4つに分解できます。
【マーケティングの基本構造】 1)知る(分析) 2)決める(戦略) 3)伝える・届ける(施策) 4)振り返る(改善)
どんな業界でも、どんな規模のビジネスでも、
この流れはほぼ共通です。
逆に言えば、マーケティングで迷子になるのは、
- いま自分がどのステップをやっているのか分からない
- 「決める」前に「伝える」ことを始めてしまう
- 「振り返り」がなく、ずっと手探りのまま
のどれかになっているケースがほとんどです。
ここからは、この4つをカフェの例で一緒に見ていきましょう。
初心者がまず理解するべき“マーケの地図”
STEP1:自分たちと市場のことを「知る」
あなたが新しくカフェをオープンするとします。
最初にやることは、いきなり「どんな内装にしよう?」ではないですよね。
まず、こんなことを考えるはずです。
・この街にはどんな人が多い? ・近くにどんなカフェや飲食店がある? ・自分たちの強みは?(コーヒー?スイーツ?居心地?)
これが、マーケティングでいう「分析」=知るステップです。
専門用語では3C(市場・競合・自社)などと呼びますが、
最初のうちは「周りと自分のことをよく観察する時間」くらいの理解で十分です。
STEP2:どんなお客様に何を届けるか「決める」
次に大事なのは、「だれに」「どんな価値を」届けるかをはっきり決めること。
・学生が勉強できる静かなカフェにする? ・子育てママが気軽に集まれる場所にする? ・テレワークの人が長時間いられるワークカフェにする?
ここをぼかしたまま店を作ると、
「誰にも嫌われないけど、誰からも選ばれないお店」になりがちです。
マーケティングの世界では、この「誰に、どんな価値を届けるか」を決めるところを
STPやポジショニングと呼びます。
でも今は、難しい言葉よりも「決めるステップがある」ことだけ覚えておけばOKです。
STEP3:どう届けるか「伝える・売る」
誰に何を届けるか決まったら、ようやく「どうやって届けるか」を考えます。
・どんなメニューをつくる? ・いくらにする? ・駅前?住宅街?商業施設の中? ・SNSで発信する?チラシ?口コミ?
ここで初めて、みんなが大好きなSNS・広告・LP・セール・キャンペーンといった
「施策」が登場します。
マーケティングの現場でバタバタしてしまう人の多くは、
この「施策」からいきなり始めてしまうんですね。
私も新人時代は、
「とりあえず広告を出してみましょう」「SNSで告知しましょう」
と、STEP1と2をすっ飛ばして走り出し、成果がバラついて怒られました。
STEP4:うまくいったか「振り返る」
どんなに良さそうな施策でも、やりっぱなしでは意味がありません。
・何人が来店してくれた? ・どの投稿からの来店が多かった? ・リピーターはどのくらいいる? ・お客様の声はどうだった?
こうした“結果”を見て、ちょっとずつ内容を変えていく。
これが「振り返り=改善のステップ」です。
このときに使うのが、
「ファネル」や「LTV」といった指標や考え方です。
でもそれも、この4ステップの最後に出てくるものだと分かっていれば怖くありません。
ここでようやくフレームワークが登場する(やさしい関連図)
ここまで読んでいただいたあなたは、すでに
- 知る(分析)
- 決める(戦略)
- 伝える・届ける(施策)
- 振り返る(改善)
という流れをイメージできているはずです。
実は、有名なマーケティングフレームワークの多くは、
この4つのどこかに“配置”されるだけなんです。
【専門用語の位置づけ(初心者向け)】 1)知る(分析) └ 3C分析(市場・競合・自社) └ SWOT分析 など 2)決める(戦略) └ STP(誰を狙うか、どう見せるかを決める) 3)伝える・届ける(施策) └ 4P(商品・価格・場所・伝え方) └ SNS、広告、SEO、キャンペーン など 4)振り返る(改善) └ ファネル(どこで落ちているかを見る) └ LTV、リピート率、CVR など
この図を見てほっとしませんか?
バラバラな用語たちが、一本の線の上に並んでいるのが見えると思います。
大事なのは、
「3Cを覚えること」ではなく「3Cはどこで使うのか」を知ること。
「ファネルを暗記すること」ではなく「何のために見るのか」を知ること。
顧客の行動にも“流れ(構造)”がある
ここまでは企業側(あなた側)の流れでした。
マーケティングをより深く理解するには、お客様側の流れも一緒に見ると一気に腑に落ちます。
初心者向けの超シンプル顧客行動モデル
専門的には「カスタマージャーニー」と呼ばれますが、
最初はこんなイメージで十分です。
【お客様の行動の流れ】 1)気づく(こんな商品・サービスがあるんだ) 2)興味(ちょっと気になる、詳しく知りたい) 3)比較(他と比べてどうだろう?) 4)購入(じゃあ、これを選ぼう) 5)また来る(良かったからリピート/人に勧める)
あなた自身も、日常でまさにこの流れを踏んでいます。
- SNSで新しいカフェの投稿を「見る」(気づく)
- メニューや店内写真をじっくり「読む」(興味)
- 他のカフェと「比べる」(比較)
- 「今日はここにしてみよう」と決める(購入)
- 気に入ったらまた行き、友人にも紹介する(また来る)
マーケティングの仕事は、この流れのどのタイミングで、何を感じてもらうかを設計することです。
マーケティングの構造を“実務で使う”方法
ここからは、実際の仕事でどう使うかをイメージできるように、
具体的な「使い方のコツ」をお話しします。
① 迷ったら「今どのステップか?」を思い出す
会議や打ち合わせで、話がごちゃごちゃしてきたときほど効果的な問いがあります。
「今、私たちは“知る”“決める”“伝える”“振り返る”のどこを話していますか?」
これを一度口に出すだけで、会議が一気に整理されます。
クライアントワークでも、私は必ずこの問いを投げます。
② 施策が増えても、構造があれば混乱しない
SNS、広告、SEO、メルマガ、セミナー…。
会社の規模が大きくなるほど、施策はどんどん増えていきます。
でも、「施策はぜんぶSTEP3(伝える・届ける)の話」と分かっていれば、
混乱せずに整理できます。
逆に、分析と戦略が弱い状態で施策だけ増やすと、
「頑張っているのに、なぜか成果がバラバラ」という状態になりがちです。
③ 顧客の“気持ちの流れ”まで見ると成果が安定する
データを見ることは大事ですが、数字だけ見ても本当の意味では改善できません。
大事なのは、数字の裏側にある「気持ちの変化」です。
たとえば、
- 気づく → 興味:ここでは「安心感」「親近感」が重要だったり
- 興味 → 比較:ここでは「根拠」「具体的なメリット」が必要だったり
- 比較 → 購入:ここでは「最後のひと押し(不安の解消)」が決め手になったり
この“心の流れ”を意識し始めると、施策の当たり外れが減ってきます。
初心者がやりがちな3つの落とし穴
300社以上の支援をしてきた中で、ほぼ共通して見てきた「つまずきポイント」を3つ挙げます。
① 用語から覚えようとする
多くの人が、マーケティングを「単語帳」のように勉強しようとしてしまいます。
でも、本当に必要なのは、
用語 → ×
構造 → ○
です。
用語は、構造の上に後から乗ってくる「ラベル」のようなもの。
大事なのは、人の行動とビジネスの流れがどうつながっているかを理解することです。
② いきなり施策を始める
「とりあえず広告出してみましょう」「とりあえずInstagram始めましょう」。
この「とりあえず施策」が、現場を一番疲弊させます。
マーケティングは順番のゲームです。
まず「知る」、次に「決める」。
ここを飛ばしてしまうと、どれだけ頑張っても効率が悪くなります。
③ 顧客視点を忘れる
表やグラフを見ていると、つい「数字そのもの」を良くすることが目的になってしまいます。
でも、数字の裏には必ず一人ひとりの生活や感情があります。
マーケティングの本質は、
「数字を上げること」ではなく「人の行動が変わること」です。
私はよく、
「数字は嘘をつかない。けれど、数字だけでは人は動かない。」
と自分に言い聞かせています。
FAQ
Q1:初心者がまず覚えるべきことは?
用語ではなく、まずはこの4つの流れです。
知る(分析) 決める(戦略) 伝える・届ける(施策) 振り返る(改善)
この流れを紙に書いて、今やっている仕事がどこに当たるのかを考えてみてください。それだけで視界がクリアになります。
Q2:フレームワークは全部覚える必要ある?
いきなり全部暗記する必要はありません。
この記事のように「どのステップで使うものか」を理解しておけば、
実務の中で自然と身についていきます。
Q3:心理モデルは難しい?
「カスタマージャーニー」「ファネル」「JTBD」など、難しそうな言葉はたくさんありますが、
最初はこの一行で十分です。
気づく → 興味 → 比較 → 購入 → また来る
あなた自身の買い物を、この流れに当てはめて考えてみてください。
それだけで心理モデルの入り口には立てています。
Q4:構造理解だけで実務はできる?
構造は「地図」です。
地図だけでは旅行はできませんが、地図なしでの旅行はただの「迷子」です。
構造理解は、すべての施策のベースになります。
ここがあるだけで、SNSの伸び方や広告の改善にも「理由」が持てるようになります。
まとめ:マーケティングは“構造”が見えれば誰でも使える技術になる
マーケティングは、難しい横文字の集まりではありません。
本質は、
- 人の気持ちと行動の流れを理解し
- ビジネスの4つのステップ(知る・決める・伝える・振り返る)に落とし込み
- 少しずつ仕組みとして整えていくこと
です。
構造が見えると、
- 会議で何が議論されているかが分かる
- どの本・情報がどの部分に関係しているか整理できる
- 新しい施策の「どこがおかしいか」も冷静に判断できる
ようになります。
今日からぜひ、マーケティングを「単語帳」ではなく「地図」として見てみてください。
きっと、あなたがこれまで学んできた知識が、一本の線でつながり始めるはずです。
内部リンク案
- マーケティングとは?初心者向けにわかりやすく解説
- STP分析とは?最初に覚えるべきマーケ戦略
- 4Pとは?商品が売れる仕組みをやさしく解説
- ファネルとは?購買行動の基礎を理解する
- カスタマージャーニーとは?顧客の行動の流れを可視化する
参考情報・情報ソース一覧
本記事の内容は、私自身が300社以上のマーケティング支援を行ってきた実務経験に基づきつつ、以下のような権威ある情報ソースの考え方・フレームワークも参考にしています。
- Think with Google「The Messy Middle」:現代の購買行動が一直線ではなく、「探索」と「評価」を行き来する構造であることを示したリサーチ。マーケティングのプロセス設計において、顧客心理を理解する重要性の根拠として参照。
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/consumer-insights/consumer-journey/messy-middle-research/ - HubSpot Japan「マーケティング戦略の立て方」:分析→戦略→施策→計測というプロセスの整理や、STP・4Pといったフレームワークの基礎的な位置づけの解説を参考に、初心者にも馴染みやすい構造に再整理。
https://blog.hubspot.jp/marketing-strategy - McKinsey「Consumer Decision Journey」:従来の一方向のファネルモデルだけでなく、購買プロセスを循環的・反復的なジャーニーとして捉える視点を示したレポート。顧客行動の「気づく→興味→比較→購入→また来る」という流れの背景として参照。
https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/the-consumer-decision-journey - Harvard Business Review「Competing Against Luck(Jobs to Be Done 理論)」:顧客が商品を「仕事を片付けるために雇う」という考え方を通じて、マーケティング構造の最下層にある「動機・ジョブ」という概念を理解するための理論として参照。
https://hbr.org/ - Philip Kotler『Marketing 3.0 / 4.0』:マーケティングを「製品中心 → 顧客中心 → 人間中心」へと捉えなおす枠組みとして、構造的な理解に影響を与えた理論的背景として参照。
これらの情報と、私自身が現場で試行錯誤してきた知見(LTV最大化プロジェクト、CRM・ファネル改善、SaaS・D2Cにおける顧客ジャーニー設計など)を組み合わせ、「初心者でも迷わないように」かみ砕いて再構成したのが本記事です。



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