KPI設計とは? 迷わないマーケティング戦略をつくる“指標の設計図”
——戦略が迷い始めるとき、指標はいつも曖昧になっている。
ある企業のマーケティング会議に呼ばれたときのことだ。
広告担当はCPAを語り、コンテンツ担当はPVを語り、SNS担当はフォロワー数を語る。
それぞれの数字は間違っていない。だが、聞いていると違和感があった。
誰も「同じ未来」を向いていなかった。
施策が迷子になる原因は、能力不足ではない。
「KPI設計」が戦略とつながっていないことにある。
この記事では、あなたのチームが
“迷わないマーケティング戦略”をつくれるKPI設計の完全ガイドを体系的にお届けする。
1. KPI設計とは?(本質を一言で)
KPIとは、戦略を迷わせないための“意思決定の基準”である。
勘違いしがちなポイントとして、KPIは「やるべき作業」ではない。
KPIとは、施策が正しく進んでいるかどうかを判断する「メトリクス(指標)」だ。
■ KPIとKGIの違い
- KGI(最終ゴール):売上、LTV、契約数など
- KPI(中間指標):KGIを達成するために動くべき数字
この関係が正しくつながったとき、戦略は驚くほどシンプルになる。
2. KPIが機能しない企業の“5つの問題”
① KPIが「タスク」になっている
- 記事を10本書く
- 週3本投稿する
- 広告を増額する
これらは作業であり、KPIではない。
② KGIとKPIがつながっていない
最終ゴールに向かう“因果関係”がないとチームは迷う。
③ 担当者ごとに別の指標を見ている
部署が違えば目的も違う。だからこそ指標を整合させる必要がある。
④ 指標が多すぎる(情報過多)
“すべてを追おうとすると、何も改善できなくなる”。
⑤ KPIツリーが存在しない
指標が点ではなく、線と面でつながる必要がある。
3. 成果につながるKPI設計3ステップ
STEP1:KGI(最終ゴール)を決める
ゴールが曖昧だと、どれだけ努力しても成果が出ない。
よくあるKGI:
- 売上
- LTV(顧客生涯価値)
- 新規契約数
- リピート率
KGIは「何が達成されれば成功か?」を定める行為である。
STEP2:KPIツリーで分解する
ここがKPI設計の中核。
KGIを“影響する要素”に分解し、因果関係を明確にしていく。
KGI:売上
├── 新規顧客数
│ ├── 流入数
│ ├── CVR
│ └── CAC
└── LTV
├── 継続率
├── 購入頻度
└── 平均購入額
この構造があるだけで、チームは「何を改善すべきか」を迷わない。
STEP3:施策とKPIを一対一で紐づける
例えば広告なら:
- 施策:広告改善 → KPI:CPA/CVR
CRMなら:
- 施策:継続率改善 → KPI:解約率/2回目購入率
コンテンツなら:
- 施策:記事最適化 → KPI:商談創出率/CVR
施策とKPIを一対一で接続することで、“成果が出る動き方”が自然と揃う。
4. 【経験談】KPIを“ひとつ変えただけ”でCVが2倍になった話
あるIT企業の支援で、長期間CVが伸びない問題が続いていた。
彼らが追っていたKPIは「記事本数」。
しかし、ヒアリングを進めると、彼らの本当の目的は“商談の増加”だった。
私はKPIを「記事本数 → 商談創出率」に切り替えた。
すると、チームの動きが一変した。
- 記事の構成が“商談につながる内容”に変わる
- 導線改善が優先される
- ジャーニーを意識した執筆になる
結果:
CV(商談)が2倍に増加した。
私はこの瞬間、あらためて理解した。
人は数字では動かない。
だが“正しい数字”があると、自然と動けるようになる。
5. KPI設計の実務Tips
■ 指標は“少なく、深く”
3~5個で十分。多いほど施策が散る。
■ SMARTゴールで曖昧さを消す
具体・測定可能・達成可能・関連性・期限。
■ KPIは“現場で見続けられる数字”であること
開封率・CVR・離脱率など、行動に近い数字が強い。
■ 仮説 → KPI → 検証 の三点セットで動く
6. KPIと関連フレームワーク(ファネル・OKR・LTV)
■ KPI × ファネル
量(流入)→ 質(CVR)→ 継続(LTV)の分解に最適。
■ KPI × OKR
OKRは「変革」、KPIは「改善」。
両方あると組織の動きが美しくなる。
■ KPI × LTV
LTV向上施策(継続率・NPS)がKPIとして機能すると、収益構造が安定する。
7. FAQ
Q. KPIは毎月変えるべき?
基本は3ヶ月固定。短期変更はチームが混乱する。
Q. BtoBとBtoCでKPIは変わる?
変わる。BtoBは商談率/案件化率が中心。
Q. 指標が動かない場合、次の行動は?
因果関係をもう一段深く分解して改善する。
8. まとめ|KPIは“未来を見失わないための地図”である
KPIは数字ではなく、未来への道しるべだ。
指標が整うと、チームは驚くほど迷わなくなる。
戦略が揃い、施策が揃い、意思決定のスピードが上がる。
正しいKPIは、戦略の“静かな羅針盤”である。
迷いが消えたとき、成果は自然と生まれていく。



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