リテンションマーケティングとは? 売上の7割を生む“継続の科学”
——売上が伸び悩むとき、原因は必ずしも「新規の不足」ではない。
あるECブランドの相談を受けたとき、広告費は過去最高、
新規購入数も順調に増えていた。それなのに売上が落ちていた。
数字を深掘りすると、答えはひとつだった。
「顧客が静かに離れていた」。
継続率がわずか3%下がっただけで、売上は数千万円規模で消えていたのだ。
私はこの瞬間、改めて理解した。
新規は“入口”にすぎない。
売上の7割をつくるのは、顧客があなたを選び続ける“継続”である。
この記事では、初心者〜中級マーケターでも
今日から実務に使える「リテンションマーケティング」の全体像を具体的に解説する。
1. リテンションマーケティングとは?(一言で理解)
リテンション=顧客が離れない仕組みをつくり、LTVを最大化するマーケティング。
リテンションは「守り」ではなく「売上を作る攻め」である。
その理由はデータが示している。
- 新規獲得は既存維持の5倍のコスト(HBR)
- 継続率5%改善 → 利益25〜95%向上(HBR)
- 既存顧客は新規より2~4倍購入しやすい
事業が伸びる企業には共通点がある。
「新規」より「継続」に投資している。
2. 売上の7割が“継続”で決まる理由(LTVの科学)
リテンションが強い企業は LTV が高い。
LTVは次の3つで決まる。
LTV ├── 継続期間(月数) ├── 購入頻度 └── 平均購入単価
新規施策では「入口」を増やすだけ。
リテンション施策は「入口 × 継続 × 単価 × 頻度」のすべてを伸ばす。
だから売上の7割を生むのは継続なのだ。
3. リテンションが弱い企業の“5つの失敗”
① 新規獲得に偏りすぎている
広告で売上は作れる。だが“続けてもらう理由”がなければ穴の空いたバケツだ。
② 顧客の状態(アクティブ/休眠/離脱)が見えていない
状態を把握できない企業は、顧客に合わせたコミュニケーションができない。
③ LTVを分解していない
LTVが低い原因が「単価」か「頻度」か「継続」かが分からない。
④ 継続体験の設計がない
初回体験が弱い企業は、高確率で離脱が起きる。
⑤ CRMが“メルマガ配信作業”で止まっている
CRM=顧客を理解し、長く関係を続けてもらう仕組み。
メール配信ではない。
4. 継続を生む3ステップの科学
STEP1:顧客状態を可視化する
まずは顧客を「同じ状態の人」でグループ化する。
- アクティブ(最近購入)
- 非アクティブ(やや離脱予兆)
- 休眠(ほぼ離脱)
- 離脱済み
状態ごとに必要な体験はまったく違う。
STEP2:継続の理由(感情)を理解する
継続を生むのは“体験の積み重ね”だ。
- 不安が消える
- 期待が裏切られない
- 小さな成功体験がある
- ブランドストーリーに共感している
継続は心理学であり、
顧客の「気持ちの状態」をデザインすることである。
STEP3:継続シナリオを設計する
顧客が「続けたい」と感じる導線をつくる。
- 初回〜2回目購入の体験改善
- 休眠予防メール(価値想起)
- 利用メリットの再提示
- ストーリー型のCRM導線
“継続したくなる物語”をつくることが、リテンション戦略の核心。
5. 【経験談】継続率8%改善でLTVが2.3倍になった実例
ある定期通販ブランドのケース。
新規は取れているのにLTVが伸びなかった。
原因は、「継続の理由」が曖昧だったこと。
顧客インタビューでわかったのは、
“商品そのもの”ではなく、
「自分を変えられている感覚」が欲しかった。
そこで、継続シナリオを以下のように改善した。
- 1週間後に「変化を実感できるポイント」を案内
- 成功者の事例をストーリーで配信
- 利用方法の誤解を取り除くガイドを追加
すると、継続率は8%改善し、
LTVは2.3倍に向上した。
私はこの瞬間、確信した。
顧客が続けるのは、商品の性能ではなく“希望”である。
6. リテンションを支える実務フレームとツール
■ コホート分析
顧客が「いつから減り始めるか」を把握する。
■ MA(マーケティングオートメーション)
一人ひとりに合わせた継続コミュニケーションを自動化。
■ CRM
顧客理解の蓄積と状態管理。
■ 離脱要因分析
離脱理由(価格/不満/期待不一致)を定性で抽出。
7. FAQ
Q. 最初に改善するべき指標は?
「2回目購入率」。ここが最も売上に影響する。
Q. サブスクとECで何が違う?
サブスクは「利用体験」、ECは「価値再認識」。
Q. どれくらいの継続率が理想?
商材次第だが、定期通販では40~60%が基準。
8. まとめ|継続は“信頼の積み重ね”である
リテンションマーケティングは数字の戦いではない。
顧客の心と歩幅を合わせる“関係性のデザイン”だ。
新規は華やかだ。
しかし、事業を支えるのは「続けてくれる顧客」である。
売上は顧客があなたを「選び続けた回数」で決まる。
継続とは、企業と顧客の静かな約束である。



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