カスタマージャーニーとは? 顧客の“無意識の行動”を可視化する設計術

実務関連

カスタマージャーニーとは? 顧客の“無意識の行動”を可視化する設計術

——人は、なぜその瞬間に「買おう」と思うのだろう?

あるプロジェクトで、私は顧客インタビューと購買データを照らし合わせていた。
顧客は「比較して決めました」と語る。
だがデータを見ると、比較という行動は一度も行われていない。

その瞬間、私は気づいた。

購買は“意識”ではなく、ほとんどが“無意識”の中で決まっている。

そして、この無意識の流れを地図のように描き出すのが、
カスタマージャーニー(Customer Journey)だ。

この記事では、心理学 × 行動経済学 × マーケティング戦略を統合し、
「初心者〜中級者でも今日から使える」カスタマージャーニーの作り方を解説する。


  1. 1. カスタマージャーニーとは?(本質と役割)
  2. 2. 顧客行動の9割は“無意識”:心理モデルで理解するジャーニー
    1. ■ システム1・システム2(Kahneman)
    2. ■ マイクロモーメント(Think with Google)
    3. ■ ギャップ理論(Expectation Gap)
  3. 3. カスタマージャーニーで使われる行動モデル
    1. ■ AISASモデル
    2. ■ DECAXモデル
    3. ■ AIDCASモデル
  4. 4. カスタマージャーニーマップの作り方(テンプレ付き)
    1. STEP1:顧客の行動を時系列に並べる
    2. STEP2:その裏にある「感情」を書く
    3. STEP3:タッチポイント(接点)を書く
    4. STEP4:障害(ペインポイント)を書く
    5. STEP5:改善策を記述する
    6. ■ 図解:ジャーニーマップの基本構造
  5. 5. 実務での分析ポイント(改善インパクトを出すコツ)
    1. ■ ① 顧客が「迷う瞬間」を探す
    2. ■ ② 感情の谷(Emotional Dip)に注目する
    3. ■ ③ 期待ギャップを埋める
    4. ■ ④ 「買わない理由」を先に潰す
  6. 6. 【経験談】ジャーニー改善だけでCVRが32%上がった話
  7. 7. カスタマージャーニーが失敗する企業の共通点
  8. 8. カスタマージャーニーがビジネスにもたらす効果
  9. 9. FAQ
    1. Q1:ジャーニーはどの粒度で作ればいい?
    2. Q2:BtoBでも必要ですか?
    3. Q3:ペルソナは一人でいい?
    4. Q4:ジャーニーとファネルの違いは?
  10. 10. まとめ|カスタマージャーニーは“無意識を理解する地図”である
  11. 内部リンク

1. カスタマージャーニーとは?(本質と役割)

カスタマージャーニーとは、

顧客が商品を知り、検討し、購入し、ファンになるまでの“行動・感情・接点”を時系列で可視化した地図

のことだ。

重要なのは「行動」だけではなく、

  • そのとき何を感じているか(感情)
  • どんな期待や不安を持っているか(心理)
  • どこで迷うのか(障害)
  • それをどう解決するのか(施策)

まで書き込むこと。

ただ行動を並べただけの「作って終わりの図」はジャーニーではない。
無意識の動きをつかむことで初めて、設計として価値が生まれる。


2. 顧客行動の9割は“無意識”:心理モデルで理解するジャーニー

顧客の行動は、論理よりも「感情」が先に動いている。

■ システム1・システム2(Kahneman)

システム1:直感・無意識の瞬間判断(購買決定の大半)
システム2:熟考・論理的判断

ほとんどの購買は「説明できない形で決まっている」。

■ マイクロモーメント(Think with Google)

・知りたい(I want to know)
・行きたい(I want to go)
・やってみたい(I want to do)
・買いたい(I want to buy)

これらの“瞬間の欲求”を捉えられるブランドが勝つ。

■ ギャップ理論(Expectation Gap)

期待と現実の差が、

  • 不満
  • 離脱
  • 感動

を生む。

ジャーニーとは、この期待ギャップを設計して埋めるためのツールである。


3. カスタマージャーニーで使われる行動モデル

ジャーニーは行動モデルと組み合わせて設計すると精度が上がる。

■ AISASモデル

Attention → Interest → Search → Action → Share

検索行動が重要な商材に強い。

■ DECAXモデル

共感 → 体験 → コンテクスト → 拡張 → 共創

SNS時代の“共感・共有型”マーケティングに最適。

■ AIDCASモデル

比較が必要な高関与商品のときに使われる。

実務では、これらを機械的に当てはめるのではなく、
顧客の行動に合わせてモデルを“選ぶ”ことが重要だ。


4. カスタマージャーニーマップの作り方(テンプレ付き)

私が実務で使っている“5ステップテンプレート”を紹介する。

STEP1:顧客の行動を時系列に並べる

知る → 検討 → 比較 → 購入 → 利用 → 再購入

STEP2:その裏にある「感情」を書く

期待・不安・迷い・喜びなど。

STEP3:タッチポイント(接点)を書く

SNS、検索、LP、メール、店舗、サポートなど。

STEP4:障害(ペインポイント)を書く

「値段が高い」「よくわからない」「信頼できない」など。

STEP5:改善策を記述する

導線改善、FAQ追加、レビュー強化、比較コンテンツなど。

■ 図解:ジャーニーマップの基本構造

【行動】  →  【感情】  → 【タッチポイント】 → 【障害】 → 【改善策】

この5列を埋めるだけで、ジャーニーの完成度は劇的に上がる。


5. 実務での分析ポイント(改善インパクトを出すコツ)

■ ① 顧客が「迷う瞬間」を探す

CVRを上げる鍵は、
この“迷いの瞬間”を取り除くことにある。

■ ② 感情の谷(Emotional Dip)に注目する

感情が落ちるポイントは離脱の温床。

■ ③ 期待ギャップを埋める

正しい情報を出すのではなく、
“顧客が知りたい情報”を出すことが重要。

■ ④ 「買わない理由」を先に潰す

ほとんどの離脱は“情報不足”ではなく“心理的不安”。


6. 【経験談】ジャーニー改善だけでCVRが32%上がった話

あるECブランドで、どれだけLPを改善してもCVRが伸びないことがあった。

データを調べてみると、離脱の80%が “商品詳細ページ” だった。

そこで顧客に聞いてみると、
衝撃的なほどシンプルな回答が返ってきた。

「良さはわかる。でも、サイズ感がわからなくて不安だった。」

施策はただ一つ。

  • 「身長別・体型別の比較写真」を追加

それだけでCVRは約32%改善した。

ここから私は確信した。

ジャーニーは“改善すべき場所”を教えてくれる地図である。


7. カスタマージャーニーが失敗する企業の共通点

  • 行動だけ並べて、感情が書かれていない
  • 理想の顧客像を描きすぎて、現実からズレている
  • タッチポイントが企業視点だけ
  • 更新されず、壁に貼られたまま数年放置される
  • 作って満足し、改善につながっていない

ジャーニーは「作ること」が目的ではない。
改善の起点にすることが本質だ。


8. カスタマージャーニーがビジネスにもたらす効果

  • CVR向上(迷いの解消)
  • LTV向上(期待ギャップが減る)
  • 顧客体験の統一(CX)
  • 部署間の共通言語が生まれる
  • 施策の優先順位が明確になる

ジャーニーはマーケティングにとどまらず、
企業全体の“意思決定の地図”になる。


9. FAQ

Q1:ジャーニーはどの粒度で作ればいい?

A:ひとつの商品につき1つが基本。ただし複数ペルソナがいる場合は分けて作る。

Q2:BtoBでも必要ですか?

A:むしろBtoBのほうが有効。
意思決定プロセスが長いため、ジャーニーで整理すると案件化率が上がる。

Q3:ペルソナは一人でいい?

A:最優先の顧客(N1)をベースに1つ作るのが最も成功率が高い。

Q4:ジャーニーとファネルの違いは?

A:ファネル=量を見るツール、ジャーニー=質(心理と体験)を見るツール。


10. まとめ|カスタマージャーニーは“無意識を理解する地図”である

カスタマージャーニーの目的は、
顧客の行動を並べることではない。

顧客の中で起きている、

小さな不安、小さな期待、小さな感情の揺れ

を見つけ、整え、導くことだ。

そしてその地図を描ける人は、
施策の優先順位を間違えない。

無意識の流れを理解したブランドは、顧客を迷わせない。
迷わせないブランドは、選ばれ続ける。


内部リンク

マーケティングインサイトとは?

マーケティングファネルとは?

ブランドアイデンティティの作り方

ファンベース戦略とは?

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