イベントが続く時期に“選ばれるブランド”の共通点とは?
毎年この時期になると、同じことが起きます。
クリスマス、年末年始、セール、キャンペーン。
やるべきことは分かっているし、施策もちゃんと打っている。
それなのに、
「あれ、思ったほど手応えがないな」
この感覚。
私自身、300社以上のマーケティング現場に関わってきましたが、
イベントが続く時期ほど、この違和感に何度もぶつかってきました。
正直に言うと、昔の私はこう思っていました。
「イベントなんだから、もっと攻めないとダメだろう」
でも今は、まったく逆のことを考えています。
「正直、ちょっとうるさく感じるかも」
忘れられない場面があります。
年末のオンラインミーティング。
画面越しに、施策の振り返りをしていたときでした。
沈黙のあと、クライアントがぽつりと言いました。
「悪くはないんですけど……正直、ちょっと疲れません?」
その瞬間、
自分の中で何かがスッと冷えたのを覚えています。
施策は正しい。
理論的にも間違っていない。
でも、相手の気持ちは見ていなかった。
ここで初めて、はっきり分かりました。
イベントが続く時期には、
「正しいマーケティング」が逆効果になる瞬間がある。
イベントが続くほど、人は「選びたくなくなる」
ここで、少し立ち止まって考えてみてください。
12月。
あなたは一日に、何回「選択」をしていますか?
- どこで買うか
- どれを選ぶか
- 今なのか、あとでいいのか
意識していなくても、判断は積み重なっています。
この状態が続くと、人はこうなります。
「もう、これ以上考えたくない」
行動心理学では、これを
判断疲れ(Decision Fatigue)と呼びます。
難しい話ではありません。
「決めること自体に疲れている状態」です。
判断に疲れた人は、比較しなくなる
余裕があるとき、人は比較します。
でも疲れているときは、違います。
人はこう考え始めます。
「一番いいのはどれか?」ではなく
「選ばなくていい理由はないか?」
つまり、
- うるさい → 外す
- 分かりにくい → 外す
- 何のブランドか分からない → 外す
この“ふるい”を最後まで生き残ったものだけが、
選ばれます。
イベント期に選ばれるブランドは、
一番頑張ったブランドではありません。
一番、判断を楽にしてくれたブランドです。
事例|売り込みを減らしたD2Cブランドの話
ここで、実際の現場の話をひとつ。
私が支援したあるD2Cブランドは、
イベントが続く時期に、あえてブレーキを踏みました。
- 派手なセールをしない
- 「今すぐ買って」を言わない
- SNS投稿も増やさない
代わりにやったのは、とても地味なことです。
- なぜこの商品を作っているのか
- どんな人に使ってほしいのか
- 今年、どんな一年だったのか
それだけ。
正直、年末の売上だけ見れば、爆発的ではありません。
でも年明け、空気が変わりました。
- 「前から気になっていました」という声
- 指名検索の増加
- 値引きなしでも選ばれる
このブランドは、
イベント期を「売る時間」ではなく
「信頼を貯める時間」として使っていたのです。
静かなブランドが、最後に残る理由
判断に疲れているとき、人は本能的に
- 落ち着いているもの
- ブレていないもの
- 自分に合いそうなもの
を選びます。
専門的には、これを
自己一致理論と呼びます。
でも、難しく考える必要はありません。
「このブランド、無理してないな」
「ここなら失敗しなさそうだな」
その感覚が、最後の一押しになります。
イベント期にやるべきことは、意外とシンプル
- 施策を増やさない
- 言いたいことを1つに絞る
- 急かさない
派手なことは、いりません。
やらない勇気が、
最大のマーケティングになる時期です。
まとめ:イベント期は「売る」より「残る」
イベントが続く時期、
人はたくさんのブランドを見て、
ほとんどを忘れます。
でも、なぜか覚えているブランドがある。
それは、
- うるさくなかった
- 分かりやすかった
- こちらの気持ちを分かってくれた
イベント期は、
売上よりも「記憶」が選別される時間です。
あれ以来、この時期になると、
私は必ず一度ブレーキを踏むようにしています。
売るより、残る。
それが、イベントが続く時期に選ばれるブランドの共通点です。



コメント